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1日8時間練習の“常識”に感じた違和感

  • 執筆者の写真: MEGURU
    MEGURU
  • 12月16日
  • 読了時間: 4分

同じ学年でフルートに入学したのは 4人。

全員、 D先生の門下生でした。

 

 

私、 Eちゃん、 Nさん、 Sさん。 この4人で3年間を共にする。 そう思っていました。

 

 

レッスンが始まってすぐに 気づいたことがあります。

 

 

 

私のエチュードの進み具合が 他の3人と比べてとんでもなく速かったのです。

 

 

 

 

当時、 私は3年生の門下生と同じ エチュードをやっていました。

 

 

 

 

Eちゃんたちはまだ1年生レベル。 あれ? 私、いつの間に こんなに技術をつけていたんだろう? 

 

自分でも不思議でした。

 

 

D先生にしっかりついていきなさいという

N先生の教えを忠実に守った結果、 

 

D先生には 「君は真面目に”クソ”がついてるな笑!」

と言われるようになりました😅

 

 

言われたことを素直にやる。 基礎練習を毎日欠かさない。

 

 

 

それだけのことでした。

 

 

 

 

でもD先生は相変わらず基礎に厳しく 私がどんなにエチュードを進めても

 

 

「まだまだ」

 

 

そう言われ続けました。

 

 

 

音楽科は 9月を境に雰囲気が変わります。

 

 

 

 

全日本学生音楽コンクールの 予選が始まるからです。

 

 

 

 

 

ピアノ、 弦楽器、 管楽器。 それぞれの専攻で コンクールに挑む生徒たちが ピリピリし始めます。

 

 

 

コンクール前に同級生に ヴァイオリンの弦をわざと切られた、 なんて噂話も聞きました。 

 

学校の練習室の取り合い。 お昼ご飯もそこそこに練習室に籠る同期達。 

「今年は誰が通るか」 という噂話。 

 

 

クラス全体がピリピリとした 緊張感に包まれるのです。

 

 

 

 

私も、 Eちゃんも、  毎年コンクールに挑戦していました。

9月から11月まで。

 

 

 

この3ヶ月間 音楽科は戦場でした。

 

 

ある日、帰宅が一緒になった ピアノ科の同級生と話していた時のことです。 

当時、 テレビをつければ

必ず流れていた 「モーニング娘。」の

話題になりました。

 

 

 

 

私は音楽にどっぷりでしたが それでも 「モー娘。」

くらいは知っていました。

 

 

 

でもピアノの同級生がこう言ったのです。

 

 

 

 

 

「モー娘。? 知らない。 テレビ見ないから」

 

 

 

・・・・え😳?

 

 

 

私は驚きました。

 

 

 

 

「土日は何時間ピアノ練習してるの?」

 

 

彼女は当たり前のように答えました。

 

 

「 8時間だよ」

 

 

8時間・・・。

 

 

 

 

私は耳を疑いました。

 

彼女にとってはそれが普通でした。 

 

テレビも見ない。 友達とも遊ばない。 休日は全て練習。 

音楽のために、

他の全てを犠牲にする。 

 

それが 「音楽をやる」

ということなのか。

 

 

 

私の練習時間は せいぜい2時間でした。

 

 

 

 

平日は学校があるので 帰宅後に1〜2時間。 

休日も 2〜3時間程度。 

 

8時間練習する同級生を見て、 私は焦りました。

 

 

 

 

いや、 焦りというより、

戸惑いでした。

 

 

 

 

 

世間で何が起きているのか。 どんな音楽が流行っているのか。 友達と遊ぶ時間。 テレビを見る時間。 

 

 

 

そういう  「普通のこと」を全て捨てて 音楽のみと生きるのが正解なのか?

 

 

 

そうしないとプロになれないのか?

 

 

15歳の私には よく分かりませんでした。

 

 

 

 

でも、 音楽科にいる以上

8時間練習するのが 「普通」なのかもしれない。 

 

そう思うと、 2時間しか練習していない自分が 怠けているように思えてきました。


高校2年の半ば。

フルートの同期 4人のうちの1人、 Nさんが学校を辞めました。 

ついていけなくなった、 と聞きました。 

 

私はショックで心配でした。 

Nさん、大丈夫かな。 音楽は続けるのかな。  これからどうするんだろう。 

でも、 クラスメイトたちの反応は びっくりするほどあっさりしていました。 

 

「あ、辞めたんだ」

「ついてけないなら当然でしょ。」  

それだけでした。 誰も驚かない。 誰も心配しない。

 

 

まるで 「当然のこと」 のように。

 

 

 

幼い頃から「勝つ」ための 教育を受けていると、

脱落者に対する感情も

こんなに違うのか。 

 

それが少し、 怖かった。 

音楽科という世界は 階級社会であると同時に 勝ち残るための戦いの場でもあったのです。  

8時間練習する世界。 モー娘。を知らない世界。 脱落者に冷たい世界。 

私は、 この世界で生き残らねばならない。 

「無関心」の対象にされたくない。 

そんな感情が 心の奥底に沸き始めていました。


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