ペラペラの「ソ」の音が、私を変えた
- MEGURU

- 12月5日
- 読了時間: 4分
前回の「私について」というお話の続きです。
「フルートって簡単な楽器だ」 と勘違いしていた、 と書きましたね。
でもその勘違いは そう長くは続きませんでした。
6年生になって、私は下級生に教える立場に。
ところが、唯一学校にあったテキストと 自分が教わっていた事が微妙に違ったり
教わったはずの運指で吹いても 「あれ、音が違う?」と迷子に。。
顧問の先生に尋ねても
「う〜ん、先生もよくわかんないんだよね汗」
と言われる始末。
家族で話し合って、 週1で名古屋の先生に習うことに決めました。
ここからが、私の大冒険。
初レッスンの前は少し早く着いて、 ロビーで宿題をしながら待機。
前の時間の高校生が泣きながら レッスン室から出てくるのを見て
「ひぇ…先生って怖いのかな😭?」
と一気に不安が膨らみます。
どうぞ〜と呼ばれて、 入室したレッスン室は グランドピアノがドーンと 部屋の真ん中に鎮座していて、
狭かった。
私の先生になったのは当時 音大を出たばかりの若いK先生。
優しい口調なのに、 芯の強さがにじむ人でした。
当時習っていたピアノの先生は 「いいよ、上手だね〜」と 褒めてくれる人だったけれど、
K先生は違った。
(この違いがとんでもない事態へ 発展していきますが、 それはまた後日・・・)
初対面なのに、
私の心の甘えを見透かされた気がして
本能的に背筋が伸びました。 (ちなみに、まだ小学6年生です😂)
先生がケースを開けると、 金色に輝くフルート。
上には上がある──ただそれだけの事実が、 胸に深く刺さりました。
先生がひと息、吹いた瞬間。
「え…?」
世界が反転したように感じました。
私の知っているフルートと、 先生のフルートは、 まるで別の楽器。
音って、こんなに澄んで、キラキラして 艶があるんだ。
「じゃあこの楽譜の『ソ』を吹いてみようか」。 その一言で、心臓がドクドク。 手は汗ばんで、ただの「ソ」が上手く吹けない。
先生に「大丈夫、合ってるよ」と言われて、 ふっと我に返る。
でも、もう一度気を取り直して吹いた私の音は──
・・・「プー」。
ただ出ただけの、ペラペラな音。
顔が熱くなって、下を向きました。 部活では「私は吹ける子」だと思われていたのに、 違った・・・、と突きつけられた瞬間。
「先生のツヤツヤキラキラの『ソ』」と 「私の『プー』」の差は、 残酷なほどはっきりしていました。
「あ、私、下手じゃん。」
そして、なぜか同時に芽生えたのは──反骨心。
「よし、プロになってやる」。
不安は不思議と、まったくなかった。
ただ、決めた。 絶対になる、と。
・・・とはいえ、まだ子ども。 練習は嫌いで「めんどくさいな〜」。 部活は楽しいけれど、 つまらない基礎練習は苦痛。
サボると母に叱られるので、 しぶしぶ1日30分。 課題は毎週、暗譜が基本。
今思えば、先生は最初から
「基礎で土台を作る」ことを
ぶらさずに教えてくれていた。
感謝しています。
もし最初からフルートが難しくて、 部活でつまずいていたら── 習いに行くことはなかったかもしれない。
きっと「部活の思い出」で終わっていた。 でも「自分には才能があるのでは?」という勘違いが、 私を名古屋へ連れて行き、 プロの音へ導いた。
重大な勘違いは、 私の人生を決めました。
あの勘違いがなければ、今の私はいない。
好きなことに自信を持つのは 悪いことじゃない。
むしろ、それは強い原動力になる。
ただし、
極めるなら 「自分より上手な人に教わる」 ことが必要だ
と痛感しました。 (くどいようですが まだ小学校6年生です)
その大切さを、あの日の「ソ」が教えてくれた。 決意は固く、現実は甘くない。 毎日の練習は退屈で、やりたくないことばかり。
それでも「絶対になる」という気持ちは、 揺らがなかった。
私たちの中には、そんな矛盾が 共存しているのだと 子どもながらに思いました。
あなたは、 初めてフルート演奏を聴いたときの 思い出はありますか? どんな感動がありましたか? |
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